日本の音楽を演奏するということ

コスキン Cosquín en Japón 2012 について、また、そこで考えさせられたことについて書くと言っておきながら、あまり書いていないので、覚えている範囲で。その後の思いも交えて。

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小川紀美代さん

小川紀美代さん

日本代表審査会のあと、セノビア・ママニ Zenobia Mamani さんのダンスの合間に、バンドネオンを演奏する小川紀美代さんのステージが30分ほどありました。2階席からは聞き取れなかったのだけど、会場からは、南米の曲のタイトルなのかな、リクエストがありました。それにもかかわらず、彼女はバンドネオンで日本の曲をやります、と言って演奏を始めました。

彼女も、日本代表としてアルヘンティーナ Argentina に渡った経験を持つ人。それ以外にもおそらく何度も渡航しているはずです。その彼女があちらへ行って一通りバンドネオンを弾いて見せたあとに言われるのが、「日本の曲はどんな曲なの?日本の曲を弾いてみせて」なのだそうです。そういう経験から、バンドネオンで日本の曲を弾いてみることにしているんですよと、そんな趣旨のことを語っておられたように記憶してます。

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ここしばらく、私自身が、アンデス音楽を日本で演奏する上での限界についてあれこれ考えていたので、彼女が語っていた話は腑に落ちるものでした。納得してしまった。だからかもしれないけど、バンドネオンで聴く「荒城の月」が非常に斬新で、しかも考え抜かれたアレンジなんじゃないかなと感じた次第。私はバンドネオンのことは良くわからないので、本当のところはわからないけれども。

アンデス音楽を日本で演奏する上での限界。これについては、おいおいここで語っていこうと思っているのだけれど。大きいのは言葉の壁、文化の壁、別の角度からは技術的な壁。ここでは詳しくは触れないことにしますが、そういったものをうすうす感じていて、それを越える方法の1つが日本の歌を演奏することだということだけは記しておきます。

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日本の歌を演奏することに対する私の中での心理的抵抗は、いまやほとんどありません。それどころか、何曲か昔の曲を採譜して、こっそり練習していたり。以前なら、「アンデス音楽やってるのになんで日本の歌なんだよぉ」と言っていたに違いないですね。今では、アンデス音楽だけを演奏し続けることへのこだわりが明らかに消えています。山を降りて、つまりアンデス山脈を西側に下って、その地域の音楽に幅広く接してきた影響かもしれませんが、よくわかりません。客観的にアンデス音楽を見られるようになったのは確かです。

同じように、アンデス地方の歌に日本語の訳詩をつけることにも抵抗はなくなってしまいまいた。これも別の機会に話すことにします。

問題は。「日本の歌」って何なんだ?ということ。日本の歌といっても、ほとんどが歌謡曲、つまりは流行り歌。日本固有の拍の取り方、音階、節回しというものは無さそうな気がします。というか、たぶん、ありません。

日本の場合、江戸~明治期の文化的な断絶が激しすぎて、江戸期以前の伝統的な音楽はほとんど残っていないように思いますね。明治期に作られた文部省唱歌等には、その頃の言葉のアクセントや江戸期の音楽の影響が無いわけではないのだろうが、やはり西洋音楽の香りがします。

先日、とあるコンサートで聞いたのが「手鞠歌」。こういうものには古い節回しなどが残っているのかもしれません。同じように、「ずいずいずっころばし」「かごめかごめ」なども、明治以前の歌なのかもしれません。誰か教えてください。

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と、いろいろ考えていてふと我に返りました。好きで演奏し続けてきたアンデス音楽もまた、流行り歌ではないのかと。アンデス音楽のほとんどが1950年代以降の音楽で、常に変化し続け新しいものが生み出されています。伝承曲なんて数えるほどしかありませんからね。

結局、流行り歌なのかとか、伝承曲なのかとか、そういうカテゴリーで音楽を括って、評価すること自体が馬鹿げたこと。自分が「いい!」と思ったもの、「演奏したい!」と思ったものを、お客が「聴きたい!」と言うであろうものを演奏すればいいのですよね。これでやっと原点回帰。

最後のはお客に媚びるのとは違いますね。やはり、演奏をわざわざ聴きに来てくれたお客の期待に応えるのは、アマチュアであれプロであれ、マナーだということ。だから、日本のお客にはほぼ必ず「コンドルは飛んでいく」 El condor pasa を演奏するわけでしょ。お客が外国人なら、そこに入るものが変わる。日本の歌になることもある、ってことですね。

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あ、また「さんぽ」の演奏、やりたいな。

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